サードメサから10マイルほどだろうか、ダートロードを砂埃をあげ、ガタガタ揺すられながら、トミーに案内してもらった。
「どれぐらい前のペトログラフかって?
学者や西洋文明の見方って、そうなんだよな、いつも。
地球の創生の歴史からしたら、ほんの短い時間で、俺らもこの絵が刻まれた時も、おんなじ時代にいるさ。
そりゃ、少しは変わったさ、車もあるし、Wifiもね。
でも、同じ大地の上で、変わらず儀式を続け、同じように暮らしてる。
ホピには、現在、って言葉も観念もないんだよ。すべてがとどまらずに過ぎ去っていくだろ。だから、あるのは、過ぎ去った過去、来るべき未来だけだよ。西洋の時間の概念とは違うんだ。
great とか、そうじゃないとか、大きいとか小さいとか、すぐに分け隔てるよな。なんでだい? すべてのものがsacred、聖なるもので、そのすべての中に、宇宙があるのにな。
それから、ホピの先祖のことを、Anazaji と呼んでるが、それは、ディネ(ナバホ)が「敵」という意味で付けた呼び名だ。これからは、もう、アナザジとは言わないでほしいな」
車の中で、トミーはいろいろと話してくれた。
悠久の時の流れの中で、ホピは生きている。
メサから見晴るかす大地は、すべて人の思惑を吸い込んでしまうかのように、私には感じられる。