準備期間がないことは分かっていたが、今夏ヨーロッパへ行く前から氣にかかっていた小林直生さんに、冨田貴史くんを通して、アプローチさせていただいた。
6月、大阪府吹田市のモモの家で、「日本の霊性とルドルフ・シュタイナー」というタイトルでお二人が対談されている。行きた~い、思いいっぱいでタカくんに伝えたら、きてください、とシンプルな返答。でも、私は、知ってたんだ、タカくんがパソコンの前でにやにやしていただろうことを。
かくして、本音も本音で、上記のタイトル「ホピ丸十字とキリスト意識」として、シュタイナー研究者であり「ヨーロッパ精神史研究所」主宰の小林直生さんに快諾いただき、モモの家でお話会を開かせていただくことになった。今回の旅が始まる数日前のこと。
小林直生さんとはまったく面識がなかったけれど、なにか、この方、と直観が働いたと思う。来ていただくことが決まってから、『シュタイナーの時代意識と原子力』という著書を2012年に上梓されていることが分かり、ああ、やっぱり。その足、いや、その場でAmazonで注文。
さて、今夏、41日間をかけて、ポーランド、ドイツ、南西フランス、北スペイン、イギリス、ヨーロッパ5か国を巡らせていただいた。モモの家での「ホピ丸十字とキリスト意識」は、このヨーロッパの旅にふれるものでもあり、旅を通した気付きであり、私の内で深め、これまでの価値観を超え、新しい時代を生きていくために、多くの人と何が分かち合えるのか、それを探りたい、そんな想いから出てきたもの。
映画『ホピの予言』を通して、ホピのメッセージを世界に発信したいという想いは、昨年春から芽を出し始め、監督宮田雪が書いた『未来へ続く道~私をホピの予言に導いたもの~』という文章の英訳もすすめた。そんな時、ヨーロッパ、正確に言うと、ポーランドから風が吹いてきたのだった。そして、次に南西フランスから。そして、イギリスからも。これは流れがきてると、喜んで受けとめた。
では、なぜ、世界に発信か?
ホピのシールドマークに示されているように、「丸に十の字、四つの肌の人たちがひとつになることで、調和のとれた地球となる」ことを願うからに他ならない。雪さんは、藤井日達上人という非暴力による世界平和をご祈念された仏教者の導きにより、映画『ホピの予言』を製作している。監督宮田雪にとって、映画製作は御仏事に違いなかった。
インディアンの使命は、自分が「民族の生きてゆく道を探す」「失った国土を取り戻す」そういうことではなく、世界の平和を作る上の中心の働きをする。それがインディアンという民族の今まで生存してき、今日の時代を救うために信仰生活を続けて平和を求めてきた所以です。インディアンの使命は世界を救う、そこであります。使命を信じて立つときに、目に見えない神様方が皆我々の味方になる。どんなことでもいい、インディアンを助けなければならない
(日本山妙法寺山主藤井日達ご法話より 1977年頃)
藤井日達上人のお弟子さまに、安田行純法尼さまがおられる。私たちは親しく純さん!とお呼びしている。アメリカに40年ほども住まわれ、ニューヨーク州グラフトンというメイプルの森林の中にお仏舎利塔を湧現なさって24年目を迎えられる。落慶法要には、ホピのメッセンジャー故トーマス・バニヤッカをお連れし、宮田と、まだ幼かった娘と一緒に参列させていただいている。
純さんは、アメリカインディアンとご縁が深く、昨年10月末に80歳で旅だったAIM(アメリカインディアンムーヴメント)創設者の一人、デニス・バンクス氏が、いのちの恩人と仰がれた方。アメリカ大陸での平和行進を数えきれないぐらいオーガナイズされ、アメリカでの平和運動とインディアン運動で、常に祈りと行動を共にされてきた仏教者だ。
純さんがご帰国される度に、亀の島での平和運動の潮流をお聞きしてきたが、2011年10月ウォールストリートを占拠せよ"の頃から、アメリカの平和運動に変化が訪れていることを、私は純さんのお話から感じ取っていた。全世界がもれなく直面している環境問題はじめ経済、戦争はじめとするさまざまな社会の病巣の根っこはひとつであると気付いてきたのだ。
そして、2016年4月から始まったラコタ・スー族の居留地スタンディングロックでの、石油パイプライン敷設計画に抗議するキャンプインは1年近くにもおよび、毎朝夕の伝統的な祈りを最も大切に、徹底した非暴力・不服従による平和運動が展開したのだ。全米から各部族のインディアンたちが集まったが、それだけに止まらず、世界中から共鳴者が訪れた。最大1万人がキャンプインしたと聞いている。
2017年1月トランプ大統領が就任し、止まっていた工事は即時再開。極寒の中、キャンプに留まっていた者たちも蹴散らされ、キャンプには火が放たれた。そして周囲数マイルにわたって立ち入り禁止区域となり、世界中が注目したDAPL(ダコタアクセス・パイプライン)抗議キャンプインはいったん収束する。
しかし、この抗議運動が示した平和活動の方向性は、平和を求める世界の人たちに大きなインパクトと勇気をもたらしたと思う。私もそのうちのひとりだ。人種、宗教、文化、言語、あらゆる違いを超えて、祈りと行動がひとつになり、いのちの危険にもたじろがなかった姿は神々しくあった。
今年3月来日したインディアン活動家であり映像作家であるマイロン・デューイ氏が共同監督した映像『AWAKEN(目覚め)』は、実に感動的で秀逸だった。キャンプでインディアンエルダーによって執り行われた毎朝夕の祈りは、インディアンに血を引く者でなくとも、この地球と繋がるすべてのいのちに生かされている「地球のこども」としての魂を揺り動かし、そのアイデンティティに目覚めさせたのではないか。その者としての祈りが、すべての私たちに共有できるチャントであると気付かせたのではないか。平和のさらに深い意味を感じ取ったのではないか。映像には、自身の誇りを取り戻すばかりではなく、目の前に立ちはだかる警察官たちをリスペクトするインディアン青年の姿があった。これだ、と思った。涙が溢れた。そこには精神性があり、愛があった。
40年前藤井日達上人はこのことを予言されたのだ、私はそう理解した。
これまで、あらゆる場面において、数限りないさまざまな国際会議、国際交流が催されてきたに違いない。多くの成果や実り、協働、連帯、交流をもたらしただろう。私が気が付いていないだけかもしれないが、そこに、もう一歩踏み込んだOnenes-ひとつであること-の理解が必要なのではないか。私は、ホピの示した丸十字、さらに深い意味を知りたいと思った。私たちは多種多様であるに違いなく、だからこそ、調和へと導くことのできる共通認識、また自覚が必要なのではないか。うかうかはしていられない、時計はすでに23時58分を示している。
ここに、ランド・アンド・ライフが1987年初版から発行し続けてきた『生命の始まりから浄化の日まで~ホピ物語~』がある。ホピの太陽氏族に属した故ダン・カチョンヴァが晩年に語り残したホピの教えの口述記録だ。そのダン・カチョンヴァ氏は、世界中のペトログリフを解き明かせば、次のようなことが分かるはずだと言っている。
わたしたちの遠い祖先は、この世界を創られた存在から、この世界を生きていくためのひとつの教えー預言ーというものを授かっている。それは原初の教えである。
地球の上でいかに平和に生きていくかを示すもので、本来、すべての宗教の根本にあるものである。
ホピの予言は、その原初の教えを、ホピの先祖がペトログリフとして岩に刻んだもので、それこそが神の計画、宇宙の計画を記したものである。
この最初の教えを知れば、今日の私たちに人種や宗教の違いはあっても、もともとひとつの兄弟姉妹だったということが分かるはずだ。
太陽氏族(サンクラン)ダン・カチョンバ
ダンは父親から、この時代の一大イベントである「偉大なる浄化の日」の始まりを見るまでは生きるだろう、と言われていました。1972年107歳で亡くなっています。
ヒョウタンのガラガラ、ホピの言葉でAAYAと呼びます。これには、太陽のシンボルとスワスティカが描かれていますね。他のシンボルも描かれます。
ヨーロッパに行く前に、密かに願ったこと。
それは、ヨーロッパでのホピと共通するシンボルとの出会い。
そして、地母神、母神との出会いだった。
だが、どうだろう、
旅立つ前に、私の目の前に、それらは次々と現われたのだった。
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ホピ丸十字とキリスト意識-1-